「とりあえず、見て見ぬ振りをするには眺めすぎたわね」

「眺めすぎ、という物差しは人それぞれかと」

「私の物差しでは、助けなければいけないところまで達しているわ」

「素晴らしい物差しをお持ちですね」

「それ、どういう意味かしら」

「もちろん、良い意味ですよ」

「……春樹、行きなさい」


傲慢だけれども、優雅な声が命令を下す。


「御意に」


春樹は、ようやく倒れている老人のそばに膝を付いた。