馬の蹄の音が耳に入るだけで、視界は何も映しはしない
顔を背中に埋めたままの私の視界は果てしなく真っ暗闇
「前を見ろ」
言われた通り前を向くと―――…
「すっ凄い…」
目の前には大きなお城
「ここが尾張、那古屋城だ」
尾張、那古屋城…
「そういえば女、まだ名を聞いていなかったな」
「私、空夜響乃です」
「響乃か…ふっ、良い名だ」
そう微笑むその人の横顔は、とても美しく思わず見惚れてしまった
「俺は織田上総介信長だ」
「おっ織田信長ぁぁあああ!?」
嘘でしょ…
まさかあの、有名な織田信長!?
この人が本能寺の変で死ぬ織田信長
「何をそんなに驚いている?」
「いや…だって…」
そうか、まだ本能寺の変で殺られるってのは知らないのか
そりゃそうだよね…
「おっ尾張のお殿様にお会い出来た驚きで…」
「ふっ…そうか」
そのまま馬は城内の敷地へと入って行った

