得にやることもないので、横目でじっくりと相手を観察してみる。(まぁ、これも習慣化しつつあるんだけど)


ゆるく内巻きにされたふわふわの黒髪に、きっとすっぴんに近いような薄化粧。

176㎝ある俺よりも大分小さい背は、ちょこまかと動いていて愛くるしいったらないんだな、これが。あー、やべ。





『いらっしゃいませー』


「.....」


『佐原くん』


「...いらっしゃいませ」


『うわ、やる気な』


「金曜日のこの時間からやる気ある人いるの?」


『...私、結構あるけどね』


「え、まじで」


『だって、金曜日は佐原くんと一緒のシフトじゃんか』


「.....」






...心臓が打ち抜かれました。


こうゆうの、ほんとよくないと思う。天然なのか変に期待させるんだよね、この人はほんと。あれか、小悪魔ガールか。


きっと、彼女は俺がその一言でこんなに苦しくなるなんて、思ったこともないんだろう。無邪気なその笑顔が、俺の胸に留めをかける。





...あぁ、もう。




「永井さんの、ばか」


『え、またいきなりですね〜』





どうしたら、いいんだか。