「それでね、ちょっと気が早いかも知れないけど……美知子さん? 聞いてる?」

「え、あ、ごめんなさい。聞いてるわ」

 識井達也との食事中、美知子は上の空だった。頭の中は横山里沙の弱みを握ることでいっぱいである。

 横山里沙は、美知子と同い年の二十八歳。身の回りをブランド物で固め、海外旅行にも頻繁に行っているらしい。美知子も何度かお土産を貰ったことがあった。同じ地位にいて、どうしてこうも違うのだろうか。給料だって、高いわけではない筈なのに。

「……あ」

 もしかしたら、里沙は他にバイトをしているのではないだろうか。それも高額の。そうでなければ頻繁にブランド物を購入したり、海外旅行へ行ったりなど出来ない筈だ。それとも、誰かに買って貰っているのだろうか。お小遣いをくれるような相手──。