そう言う悟に、俺は時計に視線を投げた。
時間は、21時半を過ぎていた。
言っていた時間を過ぎても来る様子のないゆかりを心配してのこと。
この店がある場所は飲み屋街。
この時間はすでに酔っ払いのオヤジや、若者たちがあちこちにいる。
……あんな外見だ。
野郎の餌食にされるのが目に見えている。
「やっぱり迎え行けば良かったかも。ちょっと電話してみる」
ポケットから携帯を取り出し、ボタンを押す。
繋がらないのか、しばらく悟は口を開かなかった。
耳に当てた携帯を静かに下ろし、
パタンと閉める。
出なかったのだろう。
