「どこに行くつもりだ?」 振り返ると気だるそうにネクタイを緩め、髪をかきあげる香の姿があった。 『………、』 「……あ?」 何も答えない私を、怪訝そうに見てくる香にハッとした。 不覚にも、見とれてしまった。 ……あの、香相手に。 「なんだ、お前」 呆れた様子で私の隣に座ってきた。 同時にお酒の匂いと、甘ったるい香水の香りが鼻を掠める。 ……香の香水じゃない。 おそらく向こうにいる女性たちのものが移ったのだろう。 この仕事は「飲んでナンボ」とか言っていたのを思い出した。