「おじさんに怒られちゃったよ…シチロー……」


しょんぼり顔で、ひろきが言った。


「こっちだって一応仕事なんだけどな……」


クリスマスから正月にかけて、毎日ドンチャン騒ぎの宴会ばっかりしていた森永探偵事務所は現在非常に苦しい経営状態にあった。


「何としても依頼を貰って今月を凌がないと!」


チリ紙交換のオヤジに怒られながらも、こうやって車で宣伝活動をしているのはそんな理由からだった。


「あっ!シチロー!
ほら、あそこで主婦らしき人がこっちに手招きしてるわよ!」


子豚が指差した先には、中年女性が落ち着かない様子でシチロー達の車を待っていた。


「さては浮気調査の依頼かな♪」


シチローは女性の横に車をつけると、ドアのガラスを下げて愛想よく挨拶した。


「毎度ありがとうございます♪森永探偵事務所です~♪」







「助かったわぁ~♪
この『古新聞』持ってって下さる?」




「・・・・・・・」