推理小説の謎を解かないままでいる事程、気持ちの悪い事は無い。 詩織は、いくらか早足で耕太達のいるカウンターへと歩いて行き、板の番号を伝えるとその小説の返却日を尋ねた。 耕太は内心ドキドキものだった! 憧れの詩織と会話が出来るのは嬉しいが、今の彼女の心持ちは決して上機嫌とはいえない。 耕太は掌に汗がじっとり湿った手で、パソコンに番号を打ち込む。 「あれ?」 パソコンの検索画面には、該当する推理小説のタイトルが赤色の文字で映し出されていた。 返却日を延滞しているという意味である。 .