香月が風邪をひいた。
あまり丈夫な方でない香月は、一度体調を崩すと長引く。
アプリコットティーをいれて部屋に持って行ってやると、香月はヌイグルミの下敷になっていた。
「何やってんだ」
ヌイグルミをタンスの上に並べなおしてやると、香月は頭を押さえて涙眼になっている。
「い…いたひ…」
どうやら、寝返りを打った時にタンスに頭をぶつけたらしい。
「そんな、体張って笑い取らんでも」
腰に手を当てて言うと、
涙眼のままで抗議する。
「笑い取ってるわけじゃないよぉ」
カップを勧めると、ぶつぶつ言いながら飲む。
「コブにはなっていないし、痛みが引けば問題ないだろう」
頭を撫でてやると、ふらふらともたれてくる。
「しんどいなら、寝てた方がいいぞ」
「うん…」
ベッドに寝かせてやる。
「だいたい、風邪ひいてるのに夜遅くまで何やってたんだよ」
昨夜、廊下の電球が切れたのでコンビニに買いに行って戻って来ると、香月の部屋の明かりがついていた。
「…今、麻雀オンラインが流行ってるの…」
言いにくそうだ。
当然だ、香月はまだ高校生だ。
「じゃあ、『やった~』
とか言ってたのは…」
「うん…緑一色和ったんだよ」
Vサインして見せる香月にデコピンをかます。
「さっさと寝ろ」
「うみゅ~…」