「直るのかな、これ」
オディールが焼き切れたシューターのケーブルを見て呟くと、手の甲で汗を拭いながらベッテルが顎でコンソールを指す。
「動力切っとげってよ」
オディールが慌てて動力を切る。
「オイの経験がらすっどよ、こっだらこどで泣き言さ言うやづぁまだまだハナタレだぁ」
ベッテルは涼しい顔でボルトを外していく。
「明日までに直しゃあ、出撃に間に合う。オイらが軍の未来さ握っでるんだがらよ、キリキリ働げ働げぇ」
のべつ幕なしに喋っている間も、ベッテルの手は止まらない。
「戦争なんて、やりたい奴らだけでやってればいいだろうに。俺はこんなもんいじるために技師になったんじゃないよ」
同じくボルトを外していきながらぼやくオディールに、ベッテルが真顔になって言う。
「今、刻々と戦況は激しぐなっでんだ。オイらが働がねえど、他の誰かが働ぐこどになんだよ。テメェだげ平和なら満足だか?」
ベッテルとて好き好んで軍属になったわけではない。
だが、関わった責任がある。途中で放り出すわけにはいかない。
「今回の作戦は、ワープでぎねば破綻する。もだもだしでらんねえぞ」
その姿に、オディールは自分が小さなことで凝り固まっているようで馬鹿馬鹿しくなる。
「よし、全部外したな。ケーブル点検するぞ」
「了解」
作業はまだ終らない。