鞠菜の叫ぶような怒鳴り声を聞いて、俺は思わず耳を塞ぎたくなった。


分かってる。


本当は妹との話を蹴ってまで、アメリカ行きを決めてしまった戒さんが一時憎らしいことはあった。


でも俺と戒さんの付き合いは長い。


妹よりもずっと。



ずっと深い―――





―――………


幼い頃から俺と戒さんはまるで兄弟のように育った。


どこへ行くにも、何をやるにも一緒。


二歳年上の俺のあとを追って、戒さんは俺に纏わりついてくる。


ちょっとわがままだけど、明るくて、素直で、優しいとこもある戒さんが俺は好きだった。



―――……


小学校に入学すると、俺は少林寺拳法を習いだした。


空手、柔道などの選択肢もあったけれど、何ていぅかな。一番かっこよく見えたんだ。


子供の頃なんてそんなくだらないことがきっかけで興味を持つもんだ。


案の定、戒さんも俺と一緒に習いたいと言い出し、虎間のおやっさんも反対はしなかった。


だた鈴音姐さんは、戒さんにあまりそう言うことをやらせたくなかったみたいで、彼が俺と同じ道場に通うことに渋面を示していた。


しかし最終的な決め手は「響輔も一緒やから、大丈夫やね」なんて一言。


俺は何故か小さいころから鈴音姐さんに絶大の信頼があった。


それは今でも不思議だけど、単に戒さんより扱いやすい俺の方が良かったに過ぎないんじゃないか。


戒さんは小さい頃から、血の気の多い(←でも根は優しいんだよ)お兄さんたちに苛められて(←いや、ホントは本人たちは可愛がってるつもりみたい)




随分捻くれてしまった。