それを考えると胸がちくりと痛む。


覚えのない傷みに、俺は心臓が悪いのかと悩んだ。


俺が極道だと暴露してから数ヶ月が立ち、この頃ではすっかり元通りになった河野さんにさりげなく漏らすと、


「それは不治の病だよ。お医者さんにも治せないの」


と寂しそうに笑い、意味深な言葉を投げかけてきた。


俺は河野さんの言葉の意味が分からなくて、むやみやたらと医学書を漁った。


だけど該当する病例はどこにもなかったんだ。



そうやって悶々とした日々は過ぎ、俺は、まるで長い間ずっと一緒に過ごしてきた家族のように、龍崎家に溶け込んでいたある日のこと。


俺は龍崎組が経営する貸金業の事務所でのアルバイトから帰ってくると、庭から良い香りが漂ってきた。


もちろんこの事務所のバイトはお嬢が取り計らってくれたものだ。


簡単な雑務をこなすだけの、気軽な仕事だ。


大学に行く片手間にできるので、助かってはいる。


「おかえり、キョウスケ!」


廊下の奥でひょっこりお嬢が顔を出した。


ピンクのひらひらエプロンを身にまとっている。やっぱりお嬢も女の子だな。ピンクやフリルがよく似合う。


って言うか可愛いし……


こんな風に出し抜けに笑顔を見ると、俺の心臓はまたも大きく跳ね上がる。


ドキン、ドキンと打つ心臓を押さえつつ、平静を保つのが最近ではちょっと




苦しいんだ。