彼女の手が俺の両肩に置かれる。思いのほか力強い手でぽんと叩かれ、


「なら、しばらくうちにいな。ここは男ばかりの大所帯だけど、食うもんと寝るとこには困らないからさっ!」


大真面目で言われ、俺は否定するどころか、思わず笑い出してしまった。


彼女はそんな俺を不思議そうに見ていたけど、なんかうまくいった?


思いがけず間者として侵入成功だ。





俺は―――


そうだな。最初は戒さんの手助けになりたいと思って、彼に情報を与えるつもりでこの龍崎組にこようと思っていたけど。


見た目とは全然違って、あったかく優しい彼女のことを―――



龍崎 朔羅をもっと知りたい。




そんな風に思ったんだ。





そんなわけで俺は彼女とともに暮らすことになった。



アメリカに居る戒さんに連絡すると、彼も龍崎家の養子になることが決まったと報告してくれた。


『力ずくでぶんどってやったぜ!』なんて得意げに喋ってきたっけ。


そのことにもほっと安心した。





彼女は―――お嬢は……


俺の想像した人物像とかなり違っていた。


龍崎組のお嬢として、組員からも、また青龍会会長の龍崎 琢磨からも随分可愛がられてると聞く。


我侭で高飛車、冷たいのに病弱なイメージをなんとなく抱いていたが、まるきり正反対。


さばさばしていて、男勝り。口も悪けりゃ態度もでかい。


良く笑い、良く怒る。ころころ変わる表情は、まるで仔犬のように愛らしく見ていて飽きない。


思い込みが激しくて、矢のようにまっすぐ。その上、情に厚く





―――心優しい。





だからかな。彼女は組員に慕われている。


彼女もそんな彼らに愛情を抱いているに違いなかった。


俺もお嬢のことを人間としては好きだ。


戒さんとうまく行くかどうかは分からないけど、龍崎 朔羅がこうゆう女の子で




良かったと思う。