俺は戒さんに従属する関係ではない。確かに鷹雄は、古くから虎間の補佐役だった。


だけど、戒さんはそんな関係望んでいなかった。


兄貴のように、友達のように―――それが彼の望む関係で、俺たちは彼の望むように育った。


何でも話し合ってきたし、(と言っても俺はあんまり喋らないから一方的に戒さんが喋ってるだけ)何でも打ち明けてきた。


俺は家族以上の愛情を、彼に抱いているのかもしれない。


俺の龍崎組潜入の話を母親に持ち出すと、


『こんなこと言い出すのなら…』


ふいに母親は顔を覆った。


『こんなこと言い出すんなら、あんたを東京にやるんやなかったわ』


両手を覆って、その合間から涙が混じった声が弱々しく洩れる。


『そんな大げさな。戦争に行くわけやないし』


『戦争や!あんたも白虎と青龍の関係を知ってるやろ!!あんた、龍崎のもんにそのこと知れたら………』


母親はとうとう声を詰まらせ、突っ伏して泣き出した。


こうゆうのを親不孝と言うのだろうか。


俺は妙に冷め切った心と同じ、低い体温の手で母をそっと撫でた。


『お兄ちゃんのバカ!あたしたちより戒くんの方が大事なん!?』


鞠菜も泣きながら、叫んだ。


『…そう言うわけやないけど…』


『大体まだ戒くんが龍崎家の養子になるなんて決まってないんやろ!あそこはお兄ちゃんが二人も居るし』


『戒さんが行くよ』


『……なんでそんなこと言い切れるん…』





『あの人は決めたことを必ず実行する人やから』





そう。


戒さんは決して裏切らない。


今までも、これからも―――