戒さんの柔らかい髪の先が首筋を撫で、くすぐったい。


俺はちょっと身を捩って笑うと、


「腐れ縁ですか。ええんやないですか?運命共同体みたいで」


「みたいやなくて、そうなんや。


でも、お前が龍崎組行く言うんなら、俺もがんばらなあかんな」


「頑張る?」


「兄ちゃんたちも朔羅を狙ろうとるさかい、朔羅の強奪戦や!負けへんで!!」


ああ…三人居るもんなぁ。三人同じ趣味て……


「はぁ。まぁがんばってください。怪我せえへんように」


だけど俺の忠告も虚しく、戒さんはきれいな顔に傷をいっぱい作って、それでも龍崎家の養子になる権利を力ずくでもぎ取ることになるのは


まだまだ後の話。





その翌日戒さんはアメリカに飛び立った。


まるで嵐のように俺の心に上陸して、いいだけかき回し、そして俺の中に思いの瓦礫を残して去っていったのだ。


でも今度は違う。


「俺はあと一年で卒業するさかい、今度会うときは―――


また東京でな」





一年後……


それは遠くて近い、でも確実に約束された未来―――