「戒さん!それっ!!」


俺は戒さんの肩をぐいと掴むと、背中を覗き込んだ。


「いやん。響輔のエッチ♪」


わざとおどけて、戒さんは俺の腕を振り払う。


「どないしはったんですか!その紋」


「どないした言うても、そのまんまや」


しれっと戒さんは言う。


「向こうで入れてもろたんや。苦労したで?さすが本場やけど、和彫りを専門にしとるところなかなか無くてな」


「な、何で…」





「何でて理由聞かれても。まぁあれやな。お前と離れてもうて、俺もちょっとナーバスになってたさかい、気ぃ紛れるかな思うて。まぁ若気の至りやな」






ははは!と戒さんは豪快に笑い飛ばす。


ナーバス……戒さんに一番似合わない言葉だ。


いつでも好き勝手やってるからてっきりストレスなんて感じてないだろうと思ってた。


でも考えてみれば


俺が東京へ行くって決めたときの戒さんのあの複雑な表情。


戒さんは自分なりに悩んで、そして傷ついたんだ―――




なんだ……




俺たちは似たもの同士だったんだ。





俺はちょっと笑うと、自分も着ていたシャツのボタンを外した。