「そだ。響ちゃん、コウノトリさんとはどないなった？？」戒さんは思い出したように手を打った。
コウノトリさん？
「…ああ、河野（ｺｳﾉ）さんのこと。彼女は引越しして遠くに行きましたよ」
「引越し？そーなん。じゃ、響ちゃん益々寂しいやん」
「いや……河野さんは俺の彼女じゃなくて…」
「ふぅん♪」戒さんはどこか意味深ににんまり笑って、それでもすぐに話題を変えた。
「はぁ～。はよ会いたいわぁ。俺の朔羅♪」
俺のって……
まだ彼女は何も知らないんですよ？
そう続けたかったけどやめた。
「戒さん、彼女に会うとびっくりしますよ」
ちょっと意味深に笑って、俺は戒さんを見た。俺のささやかな意地悪だ。
「何や、びっくりて」
「いえ。まぁ流石の戒さんも手こずるかと思うだけです」
「なんや、手こずるって」
戒さんがちょっと訝しそうに眉を吊り上げる。
「百戦錬磨の戒さんの記録が打ち破られるかも♪」
何せあのお嬢だ。
この先―――
お嬢が戒さんに心開くことがあるかもしれないし、ないかもしれない。
俺は戒さんの手助けをしたいけど、
彼女のことも大切なんだ―――
だから俺が知ってる秘密は心に留めておいて、それでも精一杯応援する
―――つもり……（断言できない）
「ま、がんばってください」
「なんやぁ！どうゆう意味やっ！」
この先二人に待ち受けるのは深い愛情だけじゃなく、強い絆だけじゃなく―――
運命をも変える試練が待ち受けてることを
俺は知らない。
だけど願わくば、どんな形であれみんなが幸せになることを
俺は祈っている。
