『ちょっと、お母さん!電話変わってや!お兄ちゃんやろ??』
遠くで鞠菜の声がする。
せっかくいい雰囲気で電話を切れるかと思いきや、また厄介なのが……
それでも俺は電話を耳から離さなかった。
ガサガサと慌しく電話を変わる音が聞こえて、
『お兄ちゃん!?元気??』と明るい声が聞こえてきた。
「元気や。そっちは?」
『元気やよ。あのね!聞いて♪』鞠菜の声は弾んでいた。
『お兄ちゃん、あたし彼氏できたよ♪』
へ!?
『いっこ上の高校の先輩♪委員会が一緒やったんや』
こっちが聞いていないのに鞠菜はぺらぺらと喋った。
その声は楽しそうで、明るい。
戒さんのこと―――吹っ切れたみたいだ。
『今度お兄ちゃんがこっちに帰ってきたら紹介したるわ』
「あ、うん」
兄としてはそう答えるしかない。
『戒くんには負けるけど、そこそこイケメンやで。あ、でも雰囲気似てるとこあるなぁ』
と漏らす。
戒さんに似てる??勘弁してくれ…
一人でも持て余してるのに、二人なんて俺の手に負えん。
そんなことを考えてると、
『そんなこと言いたいわけやなかった。お兄ちゃんお誕生日おめでとう♪』



