それから二日経った。


二日間あれこれ考えて、だけど考えるのが嫌になった。


お嬢の過去が嫌になったのではなく―――


それを想像する自分に―――嫌気が差した。


当時はお嬢は14だと言った。14歳の少女が背負うにはあまりにも過酷な現実。


その悲しみや怒り、恐怖を―――男の俺にはやはり知ることはできないからだ。


何もできない自分に不甲斐なさを感じつつ、時だけは冷徹と言っていいほど過ぎていく。



もちろん、このことは俺の胸だけに留めておいて、戒さんに報告するつもりはない。


一生―――誰にも言うつもりはない。


だけどこれで納得がいった。お嬢が、俺や組員の人たちと一定の距離感覚を保っているのを。


あの距離は―――実際の長さであり、お嬢の心の距離でもあるのだ。





二日間、お嬢は部屋にこもったまま、外には出てこなくて、二日目には友達と遊ぶのだろうか、ようやく出てきたけれどまるで逃げるように家を出て行った。


避けられてる。


と思ったけど、それは俺だけじゃなく何も知らない組員の人たちもそう思っていたみたいだ。


無理もない。


今は男と言う生き物が怖いのだろう。


俺が出来ることと言えば、なるべくお嬢の前に姿を現さないことだけだった。


なるべく怖がらせないことだ。




そうして夜を迎え―――


お嬢の帰ってくる前に台所で水を一杯だけ飲んでいると、ひょっこりお嬢が顔を出した。


「きょ、キョウスケ…」


恥ずかしそうにもじもじしながら顔だけを出している。


正直驚いた。


台所には俺しか居ないし、第一帰ってくるのが思ったより早い。


「あ、すみません」


何に対して謝ったのか分からなかったけど、俺はちょっとだけ頭を下げて彼女に背を向けた。


今の俺に彼女と向き合うだけの勇気は―――


なかった。


それでも


「キョウスケっ。あのさっ!」


お嬢は言い出しにくそうにして、俺に声を掛けてくる。


何だろう…


俺はそこでようやくお嬢が俺に何か伝えたいのだろうと分かって、体を戻した。