「まぁ性別は一応女の子やけど、中身はそこいらの男より男らしいで」


俺が苦笑を漏らすと、河野さんはちょっと微笑を浮かべて


「ふぅん。そ~なんだぁ」と言って楽しそうに声をあげた。


それでもやっぱり不思議に思ったらしく、


「おうちの人…?」と聞いてくる。


「う…うん、まぁ。下宿先のお嬢」


「“お嬢”??って、あの任侠映画とかに出てくる組長の娘ってこと!?」


河野さんはびっくりしたように目を開いた。


「うん…、まぁ」


「わぁ…ホントに居るんだね」と妙なところで関心している。


「まぁ口は悪いけど、いい人やよ?」


俺が答えると、河野さんはまたも笑顔を浮かべてちょっとだけ目を伏せた。


「うん。鷹雄くんのことホントに心配してそうだったもん。優しい子なんだね」


「河野さん……」





「鷹雄くんが好きな人が、優しい人で良かった。




想いが通じるといいね」








河野さんは顔をあげて、儚げに咲く桜のような


きれいな笑顔を浮かべていた。