「戒!あんたまた弓枝さんのご厄介になってぇ!!」


せっかくいい話をしているときに、鈴音姐さんが彼を迎えにきた。


戒さんは俺の影に隠れると、いーっと歯をむき出した。


「俺は家出したんや!兄ちゃんたちの居るあの家には帰らへん!!」


「何言うてるの!こんな近い場所で家出もくそもあらへん!!早ようっ!」


鈴音姐さんは手馴れた手付きで戒さんの首根っこを掴むと、和服だというのに大またに歩いて戒さんを引きずった。


「き、響輔~~~!!!」


戒さんの声が廊下に響く。


「戒さんっ!!」


俺たちはまるで引き裂かれる恋人同士のように手を伸ばしあったが、途中で俺はその手を引っ込めた。







「戒さん。さようなら」





長い間悩んでいたことが解決したので、もう戒さんに用はない。(←結構ヒドイ)


「響輔!!この裏切りもの~~~!!!!」


そんなことを喚き散らかしながら、戒さんは引っ張られていく。


これでようやく静かになった。俺はほっと安堵のため息を漏らした。





本当の裏切りは





このもっと先。



俺が17になったときだ。