「永遠なんてないのに……それでもこの気持ちがずっと続いていく気がした」


河野さんの横顔をちらりと見ると、悲しげに曇っていた。


俺が………曇らせたんだ。


たとえ一方通行の恋でも、河野さんも俺も懸命に思い抜こうとしている。




適わない恋だからこそ、想いが燃え上がる。と言ってしまえばそこまでだけど、


このとき抱いた気持ちは確かに本物で、その気持ちに嘘はない。




河野さんが俺の肩に頭をもたれさせてきて、彼女の柔らかい髪が俺の頬や首をくすぐった。


いつか戒さんが、後ろから抱き着いてきたときの感触だった。


あったかくて、安心する―――


俺も自然に河野さんの手に自分の手を重ねると、そっと握った。


さっきの冷たい感触じゃない。


温かくて……確実に彼女の中に流れる体温を感じれた。




どれぐらいそうしていただろう。


長くて…それでいて心地の良い沈黙が流れ、部屋が静寂に包まれていたとき…


河野さんが俺の手をそっと握り返してきた。


かすかに震えていて、熱い体温を感じる。


俺は河野さんの方をゆっくりと振り返った。


人工的な灯りの下、彼女は緊張に強張った顔をして、真っ赤に顔を染めていた。


「どないしたん?」


何となく聞いてみると、







「鷹雄くん……あたしに思い出をちょうだい」







と、彼女は静かに口を開いた。