この頃、俺はそれがかなりの悩みだった。


喜怒哀楽があまりなく、無口。いつも誰かの聞き役に徹している。


今考えたらかなりアホくさいことだけど、思春期を迎える多感なお年頃の中学生には立派な悩みだ。


悩んでも答えは出てこなかったので、俺は母親に聞いてみた。


「そう言えばあんたは赤ん坊の頃から大人しくて、手のかからん子やったわ。夜泣きもなかったしねぇ。生きてるのかどうかも怪しいぐらいだったわねぇ」


と、カラカラ笑う。


だめだ、聞いた俺が間違いだった。


俺の性格は親父にも母さんにも似ていない。


どうやら俺は、母さんのおなかに感情というものを置き忘れて生まれてきたらしい。


それを戒さんに何となく漏らすと、戒さんは豪快に笑った。


「そんなん気にしとるん!?アホくさ」


俺は彼のそんな物言いにムッと顔をしかめたものの(だって本気で悩んでるんだよ。笑い飛ばすなんて失礼極まりない)


すぐに表情を和らげ、






「お前は鷹雄 響輔言う人間で、他の誰でもないんや。


誰かと比べるもんやないし、誰かの真似することでもない。


他の誰に分かってもらえへんでも、俺がお前を知っとるからいいやないか」







戒さんの言葉は魔法の言葉だ。


それまで心の中でもやもやしてくすぶっていた気持ちが、すっと溶けてなくなっていく。


他の誰にも分かってもらわなくても……





戒さんさえ分かってくれればそれでいい。