あまりにも悲しい二人の行く末を、そしてそれを簡単にさらっていくことのできる戒さんを


会長は、恨んでいるかもしれない。



お嬢は会長の忠告を一応は頷いて聞いたものの、また四つ葉探しを再開して、俺たちに背を向けている。




「俺、お嬢と会長は似てないなって思ってましたけど、やっぱり血の繋がりはあるんですね。二人ともゴキブリを見たときの反応が同じだった…」


「響輔。あの野郎のことは口に出すな」と会長は忌々しそうに表情を歪め、湯のみに口をつけた。


何をやっても優雅でさまになる人に、憎らしさを覚える。


俺には一生身につけることのできない気品だ。






「まぁあれだ。俺と朔羅は戸籍上では叔父と姪だけど、血は繋がってないぞ?」





会長は湯のみをちゃぶ台の上に置いて、さらりと言った。


俺はその様子を目を開いて見た。


「―――え?」


「俺と朔羅の母親…百合香に血の繋がりはない。親同士が再婚で、俺たちは連れ子だったってわけだ」


俺は目を開いたまま目の前の会長を凝視して、そして今も四葉探しに夢中になっているお嬢の小さな背中にゆっくりと視線を移した。


「そのことお嬢は………」




「知ってる」




会長の声には、温度を感じられなかった。


ただ機械的に、言葉をつむぎだしただけで、そこに何の感情も読み取れなかった。