「ち、近い、近い!」


俺は二人を引き剥がすと、困ったように眉を寄せた。


どーしてこの人たちは人に迫らなければ喋れないんだろう…


こんなのが相手だったら、お嬢が嫌がるに決まってる。


―――お嬢は無防備に見えて、距離感をいつも図っている。


計算なのか、それとも無意識なのか……


一定の距離を置かないと、そしてふいにその間合いに入ってしまうと、お嬢は露骨に顔をしかめるのだ。


ようやく最近になってその距離が縮んだ気がしたけれど……


「どないって、まぁおもろい子ですよ」


「おもろいって何や!俺は面白さを望んでねぇ」


と累さん。


「もっとこう…あるやろ!写真より可愛いとか。優しいとか」そう勢い込んだのは慧さん。


「まぁ…確かに可愛いですけどね…。優しい―――??うーん…優しいっちゃ優しいけど…」


「なんや!はっきりせぇ!!」


累さんが苛々と腕を組んで、俺を睨んできた。


慧さんは長男だし、もう成人してるからある程度落ち着いてるけど、次男の累さんは少しやんちゃで気が短い。


「まぁ写真とはイメージが少し…いや、だいぶ?違うとしかいいようがありません。とにかくお二人も会ってみるとびっくりしはるんじゃないですか?」


俺の返事に慧さんはぶすりと口を尖らすと、その長い脚を優雅に組んだ。






「せやかて、もう戒に決まったんやもん。会うとか無理やわ」