がやがやと騒がしい教室。
クラスの半分以上は学校も違っていて全く知らない人ばかり。
そんな中であたしは幼稚園からの親友、瑛子(えいこ)と話をしていた。

「2人とも同じクラスでよかったよね」

新しい環境で心機一転、とは言っても仲の良い友達が全くいないのは淋しいし、瑛子と同じクラスになれて本当によかった。
とりあえず席は自由らしいので隣同士の席に座ると、ちょうどあたしの前の席にも男の子が机の上に鞄を下ろしている所だった。

「俺もいるんやけどな」

そう言いながら振り返った彼もまたよく知った顔で、あたしは思わず大きな声を出してしまった。

「壱夜!?壱夜も同じクラスだったの!?」

「自分らヒドイなぁ。幼馴染みだってのに、俺が何組になったかは気にならんかったんか?」

大袈裟に肩を竦めて見せる彼、高塚壱夜(いちや)は家も近所で小学校の頃からの幼馴染み。
びっくりすることに、小学校、中学校と、あたし達3人はずっと同じクラスなのだ。
ちなみに壱夜が関西弁なのは小学校入学と共に京都から引っ越してきたからで、それ以来の付き合いになる。

「あら、いたの?壱夜さん。腐れ縁もここまで来るとさすがに誰かさんの陰謀かと思うわ」

「陰謀ってなんや。別に俺が何かしとるわけやないし」

「まぁ、そんな事はどうでもいいけど、高校に入って、新しい出会いがあって、そろそろアンタものんびりしてられないんじゃない?」

壱夜に向けて意味深な視線を送る瑛子に首を傾げていると、耳まで真っ赤になった壱夜が手で口元を隠しながら小さな声で「わかってる」と呟いた。

「なになに?何の話?」

「なッ、なんでもあらへん!」

「そうそう。小春は知らなくていいのよ」

にっこり微笑みながらあたしの頭を撫でる瑛子。
不自然な程に慌てふためく壱夜。
怪しい事この上ない。

「何隠してるの~!?あたしだけ仲間外れ!?」

「そんな事よりさ、担任ハゲってありえなくない?格好いい先生期待してたんだけど」

「むぅ~・・・」

なんだか上手くはぐらかされた感が否めなくて、ふて腐れてしまうのはしょうがない。
この件はまた後日問いただすとして、あたし達のクラスの担任は思わず目を背けたくなってしまうようなハゲ頭だというのは先程の入学式で知った事実。