「パリってどうだった?」

「異常気象だかなんだか知らないけど、ものすごく暑かったよ。そして毎日、部屋とルーブル美術館の往復だ」

「でも楽しかったでしょ?」

「まあね。こっちは僕がいない間、大事件だったんだって?」

「話を聞いたの? でもわたしは三日も眠ってたから実際は何も分からないんだけど」

「僕の聞いた話によるとだ、しづ姫が倒れてこっちに戻ってこないと知った途端、圭吾がキレた。司兄貴が一発殴られて、止めに入った要兄貴は投げ飛ばされた」


要さんって警察官じゃなかったっけ


「圭吾の方が昔っから強いんだよ。柔道でも剣道でも」

「じゃ圭吾さんの手のケガって、先生を殴った時のもの?」

「いや、その後腹立ちまぎれに壁に拳をぶち当てた時のものさ」


そうだったの?


「圭吾は何も言わないだろ?」

「うん。想像もつかない」

「しづ姫の前じゃいつもおとなしいからね。心配しなくてもいいよ。君が怒られることは絶対ないから。圭吾は君に当たるくらいなら自分の頭を壁にぶつけるタイプだよ」

「わたしきっと、いっぱいいっぱい心配かけたのね」


悟くんは、うなだれたわたしの頭をポンポンと軽くたたいた。


「その分埋め合わせしてやれよ」

「そうする」


悟くんは両手を上に上げて伸びをすると、ゴロンと仰向けに転がった。


「で、圭吾とはデートから先に進んだ?」

「ちょっとだけね」