一気に家まで走り続けた。

玄関にたどり着くと、蘭はドアに持たれて座り込んだ。

激しく咳き込む。

心臓が壊れてしまうのではないかと思うくらいに、速く大きく打っている。

まるで鼓動の音が聞こえるようだ。

ハァハァと息をしながら、蘭は堪えきれずに涙を流した。

見たくなかった。

ピーターがキスをする場面なんて。

どうして、あそこなんだろう。

私の大切な場所なのに。

ピーターも、それをわかっているはずなのに。

2人で過ごした場所なのに……。

蘭は肩を震わせて泣いた。

堪えても堪えきれずに、嗚咽が漏れる。

泣き声が聞こえたのだろうか、佐雪がドアを開けて出てきた。

「蘭!どうしたの?」

佐雪はびっくりして、蘭の顔をのぞきこんだ。

「お母さん……」

蘭は佐雪にすがり付くと、さらに激しく泣き出した。

「蘭……」

佐雪はたまらなくなって、蘭を抱きしめた。

母親が幼い子にするように、長い間背中をさすり続けた。