なんとなく、海岸通りに行きたくなった。

あそこは私の場所。

私が一番癒される場所。

ピーターはいないだろう。

荒田香織とデートなのだから。

海岸通りに出ると、蘭は立ち止まった。

まさか……。

蘭は自分の目を疑った。

防波堤に並んで座っている、2つの影。

あれは――。

夕日に照らされ、朱く染まった2人の姿は、紛れもなくピーターと荒田香織だった。

蘭は動けなかった。

今すぐ立ち去りたいのに、2人の姿など見たくはないのに、目をそらすことも、歩き出すこともできなかった。

まるで金縛りにあったかのように、体も感情も時間さえも止まってしまったような気がした。