翌日から、蘭は海岸通りを通らなくなった。

ピーターが待っているのか、待っていないのか。

蘭にはわからなかったが、2人で過ごした場所を冷静な気持ちで歩くことはできない気がした。

学校でも会う機会はなかった。

そんな数日が過ぎ、土曜日になった。

ピーターと荒田香織が、映画を観に行く日だ。

蘭は朝からベッドの上で、タオルケットを頭から被ったままだった。

今頃、映画を観ているのだろうか。

何の映画を観ているのか。

今頃は、ランチを食べているのか――。

そんなことばかりが気になった。

想像もしたくないことなのに、2人の姿が手に取るように頭の中に浮かんでくる。

夕方になって、蘭はようやく起き上がった。

朝から何も食べていないのに、空腹は感じない。

簡単に身なりを整えると、蘭は外に出た。