「…おまえさぁ…」



執務をこなす私の背後で声がかかる。



振り返ると呆れたような半目をくれ頬杖をつくのは、麗しき我が主。



彼の名前は、真神 十夜。



自身の髪と瞳と同じ立派な漆黒の執務机に座る彼に違和感を憶えるのは、彼がまだ17歳になったばかりの少年だからだ。



それでもそこらの17歳とは比べられぬほどに大人びた雰囲気を持っているだろうが…。



彼はここ真神家の現当主の孫で、大切な次代の当主様なのだ。



いずれ…真神という《人狼一族》の頂点に立つ存在。



私はそんな彼の幼い頃からの教育係をしていて、そして成長した今は全てをサポートする右腕(秘書のような存在)として生活していた。



そんな彼が、顔をしかめて私に心底嫌そうな顔をしてみせる。








「おまえまた《ピヨ助》泣かせて来たんだろうが?」



「……さて?」