酸素を取り入れる為に、浅くだが息を吸う。

その時初めて血の生臭い匂いで気持ち悪くなった。

ダメだ…もうここに居られない。

私は純の横を駆け抜け、部屋を出た。

無我夢中で階段を駆け上がり、玄関を開けた。

そこからは記憶が無く、気が付いたら汗だくで自宅の玄関の前に居た。

そして自分が手ぶらで居る事に気が付く。

おそらく愛車も自宅の鍵が入ったバッグも全て置いて来てしまった。

でも今はあそこに戻りたくない。

幸い出勤前まで純の家に居るつもりだったからドレスを着ているし、ケータイはコートのポケットに入っている。

新宿に行くまでの定期はケータイに入っているので、陽はまだ高いがこのまま店に向かう事にした。

愛車やバッグは気持ちが落ち着いたら取りに行けばいい。