「じゃぁまたな」

俺は笑顔で手を振ると玄関扉を開けた。

自宅には戻らずその足で仕事場がある新宿に向かった。

今日はいつも以上に俺を指名する客が居た。

俺は少しずつだが確実にナンバー1ホストの座に向かっている。

陽子さんは毎週、黒子愛美を連れて来ている。

陽子さんが指名する青年は着実に客足を伸ばしている。

蒼井に血を売りに行ってから数日経ったある日。

いつものように仕事を終え帰宅した俺はリビングのソファーでビールを飲んでいた。

すると、眼球を握りつぶされる様な痛みを感じた。

「まただ…」

俺は『群発頭痛』別名『自殺頭痛』と呼ばれる悩ましい病気を持っている。

これは一年のある期間に自殺したくなる程の頭痛に襲われる病気。

日常に支障が出てしまう程の痛みに、酷いときは四六時中襲われるのだ。

母方の祖母の話によると、祖父が群発頭痛の持ち主で娘には遺伝しないのだが、その息子である俺に遺伝してしまったらしい。

俺はこの頭痛の時期は仕事を休みがちになる。

40歳ぐらいから、その症状は徐々に消えていくらしいが、20歳代から発症する事が多く俺はまだ始まったばかりだ。

痛みに耐える一ヶ月、自殺しないように努力しよう。