「もう…行っちゃう、の?」

玄関で帰る為に靴を履いていると、裸にシーツという格好で、ヨタヨタと歩いて来た。

細い眉が下がり、今にも泣きそうな顔で俺を見つめてくる。

「仕方ないだろ?仕事なんだから」

子供をあやす様に優しく言い聞かせる。

「…わかった」

ふてくされて、わざと頬を膨らませる。

「次はいつ、会える?」

「ビジネスで会いに来るのは一ヶ月ぐらい先になるね」

「…電話、してもいいんだ、よね?」

「死体に欲情なんてするぐらいなら、生きた人間がここに居るだろ」

「じゃぁ今夜電話するね」

キラキラした笑顔で言うが、毎日電話されても困る。

「おいおい、俺は暇人じゃないんだ。仕事もあるしスポーツジムにだって行ってるんだ。忙しいんだぞ?」

「…じゃぁ、電話しても意味ない」

蒼井の笑顔は一瞬で不服の顔に変わった。

「電話した時に予定が無けりゃ来てやるよ」

一言で不服の顔は再び笑顔に変わる。

見ていて飽きない奴だ。