蒼井に連絡してから俺は“佐々木麻央の血”の入ったタンクを愛車に積んで蒼井の家に向かった。

昨夜の電話で急かされていたので、仕事で着ていたスーツのままだった。

本当はシャワーを浴びてラフな格好で行きたかったのだが、仕事が終わる時間を知っているので、あまり遅くなると煩い。

まるで束縛心の強い彼女のようだ。

何度も言うが蒼井は彼女ではないし、俺に彼女なんて存在しない。

一時間も愛車を走らせると蒼井の住む一軒家に着いた。

蒼井は財閥の娘で、蒼井が住まいとしているのは、蒼井家の別荘。

積んで来た“品物”を愛車から降ろし、インターフォンを一度押す。

押した次の瞬間には家の中から、ドタドタと騒がしい足音が聞こえてきた。

勢い良く玄関が開いた。

「純君…やっと、会えた」

玄関の開いた勢いで、俺の胸に飛び込んで来ると思い、俺は瞬時に身構えた。

が、電話の時と変わらない声のトーンと照れた蒼井が俺の目の前に立っていた。