「ん?俺何か変な事言った?」

「いえ、そうじゃなくて。慌ててる様子が面白くて」

彼女が目を細めて笑った。

その笑顔に素直に可愛いと思った。

「そんなに笑うほどか?」

なかなか笑い止まないから不安になる。

「うん。ホストっていつでも冷静だと思っていたから、つい」

そんな事で笑っている彼女を見ていると、何だかこっちまで可笑しくなって来る。

「ふっ、愛美ちゃんもそんな風に笑えるんだな」

「へ?」

彼女の声が裏返る。

「愛美ちゃん、ここに来てからずっと俯いてて最初は笑えないのかなって本気で思ってた」

俺は苦笑いをした。

「そうですね。普段からあまり笑うことはありません。それにホストクラブってあまり良いイメージが無くて。連れて来られた時は不安で顔の筋肉が引き攣っちゃったんです」

彼女はグラスに残っていたハイボールを飲み干し、言葉を続けた。

「でも毎週、貴方とならホストクラブも悪くないかもって」

「じゃぁ俺は新しく根付いたイメージが崩れない様に頑張らないと。…あ、何飲む?」

空になった彼女のグラスを手に取る。