俺に会えるだけで喜ぶ蒼井が可愛い。

「そうだなぁ…仕事が終わってから行くから、夜になるかな」

『どうしても…夜?』

蒼井の声が低くなる。

どうやら夜に会うことが不服らしい。

俺より1つ上になる25歳の蒼井は、子供っぽいところがある。

「なるべく早くそっちに向かうから」

蒼井には見えないのに、俺は微笑んで優しく言った。

『わかった。絶対だよ?』

「約束するよ。だからいい子で待っててな」

じゃぁね、とお互い言葉を交わすと俺から電話を切った。

今の相手は“もう一人のビジネスパートナー”であって恋人ではない。

俺に恋人なんて存在しない。

鍋がグツグツと煮立ってきたので、とろ火に変えてじっくり3時間煮込む。