重たい鍋を1階にあるキッチンまで運び、ガス台に乗せる。

ガタンと大きな音を立てる。

ワイン倉庫(床下収納)から持ってきておいた、フランスのコート・デュ・ローヌ地方産の2006ジゴンダス赤を、頭蓋骨が剥き出しになった生首の頭上から回しかける。

ワイン一本を全て注ぎ終えると、頭蓋骨が海に浮かぶ小島の様に顔を出す。

それはは妖艶な光を放っている。

鍋に臭み消しのハーブ、ローズマリーとローリエを入れる。

ローズマリーはスキッとした強い香りが特徴のハーブ。

続けて、みじん切りにして炒めたセロリとにんじん、トマト水煮缶、塩、ブラックペッパーを加え蓋をして適当な強さの火にかける。

煮立つまでの間に俺は電話をかけた。

ワンコールで蒼井由梨(アオイユリ)は電話に出た。

『純君…久しぶりだね。…電話くれたって事は、会いに…来てくれるんだよね?』

「あぁ。明日行くよ」

綺麗な蒼井の声に素直に答える。

『嬉しい!…明日、何時に来てくれるの?』