赤信号でブレーキをかける。

くわえていた煙草を灰皿に捨てる。

白いフィルターにはピンクのルージュが光っていた。

助手席に放り投げていたブランド物のバッグを手に取る。

そのバッグをスカートがせり上がって剥き出しになった膝の上に乗せる。

私は左手でバッグの中から茶封筒を取り出した。

それはさっき純から受け取った約束のお金。

信号が青に変わった。

左手に茶封筒を持ったままハンドルを握りアクセルを踏む。

次の信号は黄色だったので更にアクセルを踏んで、10キロオーバーで通過した。

3つ目の信号は黄色から赤に変わってしまいブレーキをかけた。

左手の茶封筒の中身を取り出し、弊紙を数える。

何年も前からこんな事をしているので弊紙を数えるのは銀行員並みに手慣れたものだった。

「…また多いよ」

決まって純は約束より数枚多く弊紙を入れて渡す。

その額は前回の女と同じ額だった。

茶封筒に弊紙を戻し、膝の上に乗せたバッグにしまう。

信号が青に変わり、アクセルを踏んだ。