「……それどうすんの?」

永原が震える声で俺の背中に問う。

「別の部屋に運ぶ」

佐々木麻央を横抱きにして永原を見た。

女は全身から力が抜け、手足はダラリと垂れ下がり、首が頭を支えられず顎の先は天井を向いていた。

肉の塊と化した女は重い。

「永原、そこ開けて」

俺は顎をしゃくり、鉄格子を指した。

永原は無言で鍵を開け、扉を引いた。

続けて白い扉も開けた。

「サンキュ」

垂れた頭が壁にぶつからない様に慎重に扉を通り抜け、次の部屋へ向かう。

次の部屋…それは細い廊下の突き当たりに位置する部屋。

例えるなら煙突の先の部分。

硝子張りの巨大冷蔵庫を横切り、突き当りの扉まで真っ直ぐ歩く。

その後ろをゆっくりとついて来る永原。

「悪いんだけど、ここも開けて」

振り返り、後ろに立つ永原に頼む。

永原は無言で扉を押す。

部屋が鼻を突く生臭い血の臭いで出迎えてくれた。

「ここは?」

永原は部屋を見回し、中央に設置された実験台を見つめ聞く。

その実験台は人ひとりが横になるには十分な大きさだった。