「…うぐぇっ」

蛙の呻き声が女の口から漏れる。

女は首を絞める俺の手首に9本の爪を立てるが、爪が剥がれて上手く力が入らないのか、俺の手首に激痛が走る事はなかった。

2本の足をバタつかせて必死の抵抗をする。

膝が背中に当たり、何度も前につんのめり女の上から落ちそうになった。

前につんのめる度に俺の体重が首を絞める両手にかかるので、女の口から何度も呻き声が漏れた。

女の目からは涙がとめどなく溢れ出て、耳まで一直線に流れる。

微かな呻き声が漏れる口は唾液が垂れ唇の端を濡らしていた。

俺は今まで以上の力を両手に込めた。

俺の手の中で骨が砕ける。

バタつかせていた両足は動きを停止し、両手を掴んでいた手は左右に倒れた。

「……死んだの?」

後ろから小さな声で永原が聞く。

「…あぁ」

首から手を離し、女の上から下りる。

数秒前まで生きていた女はたった今“佐々木麻央”と言う名の肉と化した。

俺の両手首には女の生きた証として爪の跡が残っていた。