その所為で佐々木麻央の中で何かが切れたらしい。

「寝てあげるから見逃してくれって言ってるのよ!そしたら先輩の事も黙ってたのに!!このキチガイっ」

佐々木麻央の目には怒りの炎が燃え始めた。

「だったら……だったら殺される前に殺してやるー!!」

ヒステリックに叫ぶと佐々木麻央はマニキュアで彩られた長い爪を立てて、肉食動物の様に襲い掛かって来た。

ゴチャゴチャした爪が目の前まで降りかかって来た。

カチーンと俺の左腕に付けている腕時計に佐々木麻央の長い爪が当たった音と、女の悲鳴はほぼ同時だった。

「ぁあ゛あ゛ー!!!」

女は右手を庇う様に胸に抱きながらその場に崩れ落ちた。

右手の中指の先から真っ赤な血が吹き出している。

腕時計に当たった衝撃で中指の爪が剥がれたのだ。

肉が付いている剥がれた爪は女の足元に転がっていた。

「ぁあ゛ー畜生っ畜生っ!!」

女の瞳からは大粒の涙が流れていた。