「ぃやっ……」

部屋に入ると鉄格子の向こうから、小さな声が聞こえた。

「今の聞こえちゃった?」

立ち上がって俺を見つめる佐々木麻央に無表情で聞いてみる。

立っている佐々木麻央は中学生の様に背が小さかった。

おそらく身長は150cm前半。

「お願い、だから……殺さないで…」

彼女はいやいやをするかの様に首を左右に振る。

一歩一歩、少しずつ後ろに下がり、彼女は自分が入っていたトランクに足を引っ掛け尻餅を突いた。

「君は俺の中で生きる」

少しの沈黙の間に彼女は自分がこれからどうなるのか悟ったようだ。

俺を見つめる大きな目は一段と大きさを増し、その瞳は涙を帯び始めていた。

「そんな…」

形の良い唇が小さく動いた。

「俺は君を食べる。比喩なんかじゃない。そのままの意味」

俺は鉄格子の扉を開け、中へ入った。

「いやあぁぁーっ!!」

さっきとは対照的に耳を塞ぎたくなる様な悲鳴をあげた。