障害物は細長い足だった。

勿論その足は雅の物。

俺は一気に青ざめた。

血の臭いがする。

「雅っ!!」

扉の隙間から体を滑り込ませ、作業部屋に入った。

雅は作業台に寄り掛かる様に倒れていた。

左手首からは赤黒い血が溢れ出している。

右手に握るメスで切ったのだろう。

「何してんだよっ!!」

出血の量からして、切ったのはついさっきだろう。

出血を止めるために、近くにあったゴムチューブを雅の腕に巻いて止血した。

雅の肌は青白くなっっていた。

俺は慌てながらも雅を助けるために、救急車を呼んだ。

「じゅ…ん?」

うっすらと目を開けた雅は視点が定まっていない。

「喋るな。今救急車呼んだから、話は後だ」

子供を叱る様に早口で言うと、雅は目を閉じた。

「…死に、たい……の…………」

小さな声でそう言うと、雅は意識を手放した。

「なんで……」

雅の頬に涙が伝った。