「あの…」

上目遣いのアキナは俺にケバい顔を近づけ、声を潜めて話し始めた。

「エリカさんとパートナー…って本当ですか?…その、恋人…」

俺はグラスを傾けながら横目でアキナを見ていたが、恋人というワードに酒を吹き出しそうになった。

俺は正面からアキナを見つめる。

「そんなんじゃない」

「あれ?エリカさんはパートナーだって言ってたから…」

多分それはビジネスパートナーの“パートナー”だろう。

でも他人が聞いたら恋人に聞こえるのは無理ない、か。

「じゃぁ…失礼ですけど、ユウマさんは今ぁフリー…なんですか?」

アキナは今初めて俺の名を口にした。

俺はまだ自己紹介をしていない。

永原が偽名で俺の事を話していたのかもしれないし…。

まぁデカイ店で働いているナンバー2の男だからな…知っていても不思議じゃない。

「あぁ…今はいない」