毎日、毎日美術室に来た。



橋本くんと、最後に話したのが何日前だったのか、分からない。



(…あと、少し…)


絵が、完成する瞬間というのは、何度経験をしても、気分が高揚してしまう。




(…よし、これで…)





「出来た…」




はぁあっと、大きく息を吐く。





どうしよう、これから。


絵は、完成した。




あとは、見せるだけ。


そして。



伝えるだけ。





(うぅ…。緊張してきた…!)



ぎゅうっと、自分の胸元を握りしめる。


(…って、うわぁ!どうしよう。絵の具だらけだった…!)



こんな格好、橋本くんには見せられない。



(あ、明日、明日にしよう。うん)



せめて、ちゃんと絵の具を落としてから、告白しよう。



(んで、失恋したら、あずちゃんがきっと慰めてくれる…)


バカねぇ、と呆れて。



でも、思いっきり泣かせてくれる姿を想像すると、大丈夫な気がしてくる。



(…大丈夫、大丈夫。)






「完成したの?おめでとう」


突然掛けられた声に驚いて、振り返ると入口付近に橋本くんがいた。


「…え?」



「一番に見せてくれる約束だったでしょ?待ちきれなくて、来ちゃったよ」


彼は、何も問題ないかのように、さらっと答える。


「…は、しもと、くん」



「久しぶり。玉木さん」



「ひ、久しぶり…?」



なんだか、とても不機嫌そうだ。



「…えぇっと、怒ってる?」



「かなりね」



「私、に…?」



「当たり前でしょ。他に誰がいるのさ」



「え、あ。えっと、そうだよね。…ごめんなさい」



怒られるようなところ?と考えたら、いっぱいありすぎて、どれが理由かわからなかった。



「なんで、謝るの?」



「橋本くんが、怒ってるから…」



「…じゃあ、なんで、俺は怒ってると思う?」



「えぇっと…その」