「話もどすけど…なんか熱く語ったら疲れたから座る」


ユカは白いベンチに座りなおした。


「陽依、恋するとさ、いろいろ考えるじゃない。その人のこと考えるでしょ?」


「うん!」


「そのときに、『こうしたら喜んでくれるかなぁ』とか『私のこと好きかなぁ』とか考えていくうちに、どんどんマイナスな思考も生まれてくるわけ」



マイナスな思考?


「『もしも…彼女いたらどうしよう』とか『もしかしたら他に好きな人いるかもしれない』とか」



私がさっき、ユカに言った怖がってることだ。


“もしも…嫌いって言われたらどうしよう”



「もしもっていうのはさ、考えるだけ無駄なのよ」



私はいつのまにかベンチの上に正座して、ユカの話を聞いていた。


「本人から聞いたわけでもないのに、勝手に妄想して落ち込んで…バカだと思わない?」



そうだよね。

直接本人から『嫌い』って言われたわけでもないのに、自分で自分を追い詰めて…考えてみれば自虐行為に近い。


でも、直接『嫌い』って言われたら、もっとキツイような。


「本人に『嫌い』って言われたとしても、諦めなきゃいいじゃない。好きになってもらえるように努力すればいいじゃないの。他人に自分の気持ちを抑制する資格なんてないんだから」



「だけど…」



「それに初めからフラれるって決めつけてる気持ちもいけないわね!」


ユカはそういいながら、私にデコピンする。


「痛いっ」


「告白ってのは、気持ちを伝えることが第一目標なの。“付き合う”ってのはその副産物」


「そうなの?」

「そうよ。陽依は要領も悪いし、一度に二つのことができるほど器用じゃないでしょ?」


はいと頷くしかできない。