藤井先輩と私。



屋上から教室に戻ると、案の定クラスには誰一人いなくて、私の鞄だけがあった。

いつも思うけど、みんな帰るの早いよね。


放課後の教室で、ふと思う。


私、やっぱり藤井先輩のこと傷つけてたんだ。


楠木さんに言われて、つい忘れてしまっていたけれど、先輩に対してあの態度はいけなかったと思う。

それにパニックになったからってタメ口使っちゃったしなぁ。


あれから全然藤井先輩に会わないけど、会ったら全力で謝ろう。



教室を出て、廊下を歩く。


吹奏楽部のトランペットの音が遠くで聞こえる。


野球部の練習の声がグラウンドから聞こえる。



なんか、青春だなぁ~。



と思いながら歩いていると、見慣れたオレンジ色の頭が廊下の先に見えた。


少しうつむき加減で歩いているのは、藤井先輩。


どうしよう。


声掛けようにも、ここからじゃちょっと距離があるし…走っていくか。



少し小走りで先輩のもとへ駆け寄る。


あと数メートルのところで藤井先輩がこちらを振り返った。



「あっ…」


目と目がバチッとあう。



一瞬止まる時間。



私が先輩の名前を呼ぼうとしたら、



「あー!!今日はジャ○プの発売日やった!!急いで帰らな!!」




と風のごとく走り去って行ってしまった。