藤井先輩と私。

 

ピタっと楠木さんの歩みが止まる。



そして、ゆっくりと私の方を振り向いた。



「……藤井ファンクラブは今日解散する」





………。



へ?






今、なんて。





「藤井先輩には幸せになってもらうのが、ファンクラブ規則第1条第一項にも記されてるからな」



「それはどういう…」




「潮時ってこと」



楠木さんは、さっきと変って優しく笑った。


「橋宮さんの口から本当の気持ち聞けて私もスッキリしましたわ。今日、これから全会員と会議を開いて正式にファンクラブを解散します」


ファンクラブを解散するってことは、楠木さんは先輩のことを諦めたってこと?



「そもそも姉の遺志を全うするために継いだファンクラブですけれど、もういいんですの。橋宮さんに藤井先輩の幸せ任せる事にしましたわ」


「えぇ!?藤井先輩の幸せって…」


「あなたならできると信じていますわ。でわ失礼します」



楠木さんは、スキップしながら階段を下りて行った。


私に先輩の幸せを任されても。


それにファンクラブ解散って…。


ん?いや待てよ。


ファンクラブって会員の子たちに勝手に藤井先輩に手が出せないように統制していたところだったよね。

それがなくなるってことはつまり、誰でも藤井先輩に近づける。


ということは……会員の子たちがすべて強力なライバルってことじゃない!


明日から、みんなが藤井先輩を狙って…。



なんだか、すこし焦ってきた。