「好きなら、好きってなぜそう言わない!私が怖いからか?…その程度で気持ちを偽るぐらいの“好き”なら、そんなんやめちまえ!」
私の肩を掴んでいる楠木さんの手に力が入る。
「好きだと前を向いてはっきり言えない奴に、藤井先輩を想う権利はない!」
楠木さんはそれだけ言うと、私の肩から手を外して、屋上の出入り口へ歩き始めた。
なんか…
なんかこのままじゃいけない気がする。
なんかダメな気がする。
楠木さんは、あんなに泣いて私を叱責してくれたのに。私は…
「待って楠木さん!」
私は、私史上最高の声を出して、楠木さんを呼びとめた。
楠木さんはそれでもドアに向かって歩く。
「待って!」
私は走りながら、大きく息を吸った。
「…っ…私も藤井先輩が好きです!」

